第9回 気候①:大気の大循環①

 テーマ:気候(大気の大循環)

内容:大気の大循環、偏西風、貿易風、中緯度高圧帯、赤道低圧帯、年較差、日較差、雨季、乾季、季節風(モンスーン)

ログインチャレンジ⑤:長江とアマゾン川の勾配と流量(2020年センター試験地理第2問問1)

導入問題:ハリケーン・カトリーナは時計回り?反時計回り?

     雲は東西、どちらに流れている?

思考問題:教科書work:チュニスとテヘランには雨季と乾季が見られるが、その理由を気圧帯の移動との関係から述べてみよう。

思考問題:基本課題⑤大気の大循環(2013年度センター試験地理B第1問問1)

     発展問題⑤大気の大循環(2016年度センター試験地理B第1問問5)

第9回です。

ここから気候に入っていきます。まずは世界の気候を司る大原則となる大気の大循環を見ていきます。
ログインチャレンジ問題を用意しましたが、生徒も慣れてきたせいもあってログインまでの時間にタイムラグがなくなってきて、必要なくなってきましたので、あと3回くらいでなくなります。あとは人文地理的な内容にや地誌に入ると、生徒の疑問やこちらの発問が導入問題になっていきました。

ちなみにログインチャレンジ問題は「長江とアマゾン川の勾配と流量」に関するもので、同じ安定大陸でありながら、勾配に大きな違いのある河川を取り上げ、チベット高原の存在に着目させ、その勾配の違いを推測させ、さらに気候の違いから河川の流量を推測させるという面白い問題でした。気候はこれからやるので、流量に関しては本当に推測になりますが、導入問題としてはこれはこれで良いと思います。これから気候を学んでいくきっかけになりますので。共通テストで問われれるようになった知識活用型の問題で、地理はセンター試験の時からこのような問題が多かったと思います。

本題です。

導入


導入問題:①ハリケーン・カトリーナは時計回り?反時計回り?
     ②雲は東西、どちらに流れている?

①は教科書にハリケーン・カトリーナの衛星写真が掲載されていて、時計回りか反時計回りかを意見交換してもらい、サイクロンは?とか聞きながら、なぜ雲が流れる方向が決まっているのか?という視点から大気の大循環に入っていくパターンで、ロイロを使う前から導入としてやっていました。答えは地球の自転と転向力(コリオリの力)です。また、トイレの渦巻きは時計廻り?反時計廻り?と遊んだりします(トレイの渦巻きは自転の影響ではないそう)。また、理系の生徒にはコリオリの力が物理に関する話なので盛り上がったりします(かなりややこしい話らしい)。

②は今回、タブレットを使っているので、せっかくだから、雲が流れているようすをアニメーションで見てみようということで「windy.com(https://www.windy.com/ja/-%E8%A1%9B%E6%98%9F-satellite?satellite,35.690,139.689,3)」で雲の動く様子を見てもらって、①と同様に中緯度においては雲は西から東に流れている理由を大気の大循環から考えていこうという流れです。今回はこちらを採用して、ロイロのカード提出機能を使って「大気の動きの法則性」というタイトルで提出箱に提出してもらいました。集まってきたものを見ながら、「西から東へ」、「赤道を中心として渦の巻き方が異なる」などを紹介しながら、なぜに迫っていく形をとりました。

展開①大気の大循環

雲が「西から東へ」、「赤道を中心として渦の巻き方が異なって」流れる理由を見ていきます。
教科書には大気の大循環の模式図に上昇気流と下降気流を矢印で記入する「work」がありますので、これを使って原則的な流れを掴んでいきます。とりあえずノーヒント記入してもらいます。上昇気流がどのように発生して循環を生み出すのかを考えてもらいます。
今回はタブレットにロイロを通じて模式図の画像を送って、それにタブレットペンで矢印を記入してもらい、送り返してもらいました。回答共有機能も使って答え合わせもしました。

ここからはスライドを展開させながら、赤道付近は太陽光を受けやすいので、蒸発・上昇気流が発生し(低圧帯)、上空で冷やされた空気は下降気流となって吹きおろす(高圧帯)、この基本原則を説明します。これで上昇気流と下降気流の循環が理解できると思います。次にこの上昇気流が発生する場所である低圧帯の位置と下降気流が発生する高圧帯の位置を模式図で確認します。赤道低圧帯、中緯度高圧帯、高緯度低圧帯、極高圧帯ですね。次に風は高圧帯から低圧帯に、つまり高いところから低いところへ、風は吹いていくことを説明した後、貿易風や偏西風が高圧帯から低圧帯に向かって吹いていることを確認します。ただし、それは左や右にカーブしていることにも触れておきます。この右カーブや左カーブが雲が「西から東へ」、「赤道を中心として渦巻きが異なって」流れる要因になります。

ちょっと前まではこの循環のFLASHアニメーションがインターネットで見れたのですが、今は見れなくなってしまいました。
参考までに、以下のサイトで見れました(今は見れません)
CDーRがAmazonで買えるようです。

高圧帯から低圧帯に向かって風が吹くことが確認できたら、「なぜ右にカーブ(北半球)、左にカーブ(南半球)するのか」を意見交換してもらいます。ロイロで意見を出してもらってもいいと思います。答えは最初にも触れましたが、地球の自転による転向力(コリオリの力)です。この転向力によって、北半球では進行方向に対して右にカーブ、南半球では左にカーブをします。台風やサイクロンの渦の巻き方もこれで説明ができます。貿易風、偏西風の吹き方もこの原則に従って吹いていくので、一見ややこしい大循環も、①上昇気流の発生→②低圧帯の発生→③下降気流の発生→④高圧帯の発生→⑤高圧帯から低圧帯へ風が吹く→⑥転向力によってカーブの原則で説明がつきます。あとは言葉の説明で、中緯度でふく西寄りの風が偏西風、かつて航海に利用された赤道低圧帯に向かって吹き出す貿易風という説明をすれば良いと思います。偏西風は中国から黄砂やPm2.5なども運んできますから、そういった情報の方が生徒には身近かもしれません。

偏西風の中でも特に流れの強い部分を「ジェット気流」と言いますが、航空機はこのジェット気流を追い風として利用したり、向かい風の時は避けるために、航路を変更して飛んでいたりします。フライト時間も変わってきますから、この航空機の航路やフライト時間から偏西風を気づかせるってのも面白いかもしれません。現在飛んでいる飛行機の航路やフライト時間をリアルタイムで見れるのが以下のサイトです。
「フライトレーダー24」(https://www.radarbox.com/flight/FX15

展開②気温・降水量の原則

次に同緯度でも気候や降水量が異なる理由を気温・降水量の原則をおさえながら学んでいきます。気温の原則は生徒も中学校での学びや経験的に分かっていることも多いと思いますが、ここでは①低緯度で高く、高緯度で低い②海抜高度に反比例(標高が高くなれば気温は低くなる)の2つを確認しておきます。低緯度ほど気温が高くなる理由は太陽から受け取る熱の多さによるものです。

次に年較差(最暖月と最寒月の平均気温の差)の原則を見ていきます。教科書や資料集には雨温図が載っていると思いますので、雨温図を見ながら考えていきます。例えば、気温の原則に従えば、同緯度の東京とランチョウは同じような雨温図になるはずですが、もちろん異なります。
年較差でいうと、東京は20℃、ランチョウは25℃です。この辺りは年較差を答えさせてもいいですし、その理由を地図を見ながら考えさせたり、状況に応じてやっています。

年較差の原則は①緯度に比例し②内陸ほど大きくなります。①は高緯度ほど年較差が大きくなるというわけですが、これは太陽高度や日照時間の年変化が高緯度ほど大きいためです。②の内陸ほど大きくなる理由は大陸と海洋に比熱の差によるものです。簡単に言えば、大陸の方が冷めやすく、熱しやすく、海洋の方が冷めにくく、熱しにくいということです。いつも、この事例は「鍋と水」で説明をします。「鍋に水を入れて火にかけたら、どちらが先に温まるでしょう?」「火を止めたら、どちらが先に冷めるでしょう?」という問いなら体験的に分かっていると思いますので、この事例を使います。鍋=個体=大陸、水=海洋です。これで大陸の方が高くなりやすく、低くなりやすいことがわかると思いますし、海洋はその逆であることがわかります。これが、同緯度でも、東京とランチョウで年較差が異なる理由になります。この大陸と海洋の比熱差は季節風の吹き方にも関わる話なので、しっかりとしといて損はないです。

もちろん、気温を左右するものは海流や気流もありますので、それは付け加えておきます。
ただ、ここではそこまで深入りしません。気候区分を見ていく際に紹介をしていきます。


次に降水量の原則です。
降水量の原則は①赤道低圧帯で最も多く②中緯度高圧帯では少ないです。

赤道低圧帯は蒸発作用と上昇気流が発生しやすい地域ですので、雨が多くなることも理解できると思います。逆に中緯度高圧帯は水分を失った下降気流の発生する地域ですので、乾燥傾向です。

この原則をおさえた上で、教科書の「work」に取り組みます。
「チュニスとテヘランには雨季と乾季が見られるが、その理由を気圧帯の移動との関係から述べてみよう。」
これはロイロで提出してもらいました。

チュニスとテヘランは東京と同緯度にありますが、雨季と乾季が明確にあり、乾季の降水量は非常に少ないです。

提出されたものは
①「夏は中緯度高圧帯に入り、冬は赤道低圧帯に入るから」というのが多かったですね。
中には
②「地軸が傾いているため、気圧帯が季節によって移動するから」という意見がありました。

①の意見は多く出てきますが、②の部分まで気付ける生徒は少ないようです。問いに対する答えとしては①で十分ですが、発展的な内容として「なぜ移動するのか」を考えさせてもいいと思いました。地軸が傾いて公転していることによって太陽光の当たる部分が変化して低圧帯・高圧帯が移動します。

この赤道低圧帯の移動も最初の方で紹介したアニメーションが分かりやすかったのですが、今はCDーRを買わなければ見れません。調べたら、2010年版の第5版のDVDが8000円で出てますね。

このあたりで時間が来てしまった気がするので、ロイロに提出されたものは次回の頭で紹介していたと思います。


終わり





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